はじめに
『みててカーニバル』は、Eテレ「おかあさんといっしょ」の6月の歌として放送されている音楽クリップです。
初めて観たときは子どもと一緒に目が釘付けになり、曲が終わると目頭が熱くなりました。
「絶対ファンアートを描く‼」とすぐに決意し、この魅力をどうやって余すところなくイラストに込めようか??と思考を巡らせる日々。
イラストが完成しても熱が冷めやらず、ブログでも書き綴ります。
この記事では
『みててカーニバル』で心動かされるポイント
について歌詞と映像を分析していきます。
『みててカーニバル』で心動かされるポイント
この作品の魅力は、何といっても
歌詞と、それが歌われている時の子どもたちの表情
にあると思います。さらに
工作で舞台を作ってしまおうという何ともわくわくするような全体のコンセプト
そして、この世界観をより楽しくする
おにいさん、おねえさんの歌とダンスと表情
が、作品の魅力をより引き立たせています。
歌詞を追いながら見ていきます。
前奏~Aメロ
♬テレレテーレレレッテーテッテ♬
初見で『きみのえがお』かと思いました。
「きららん きららん ららん らん」と踊りだしたくなるイントロですね!(伝われ)
おにいさんおねえさんたちが、軽快なステップで踊っています。まさにカーニバルって感じのわいわい楽しい雰囲気です。
それぞれが工作やお絵描きをしており、作ったもので何をするんだろう?と思わせる入り方ですね。
♬ラッパをふくからみてて(パンパカパーン!)ねむたいおひさまおこしちゃうから(わお!)♬
「あ~、あるある!」ここで共感します。
小さい子どもと居ると
「ねえ、みてて‼」
「ちゃんとみてて‼」
「さいごまでみてて‼」
(最後ってどこ⁉家事が進まない~(-_-;))という現象がよくあります。ちょっとでも気を逸らすと怒ったり泣いたり、可愛いんだけど大変です…(^▽^)
ここを聞いて初めて「あぁこれは子ども目線で大人に向けた歌なんだ」と気が付くのです。
♬おりがみおるからみてて かみひこうきでブラジルまでいこう(オーラ!)♬
うん、うん。あるある。発想が子どもらしくて夢があって可愛いです。
ここまでが、まやおねえさんパート。ゆういちろうおにいさんが合いの手を入れています。二人とも表情豊かで、見ている子どもも大人も楽しくなりますね。プロはすごいです。
♬つみきをつむからみてて(えっさえっさ!うちゅうまでとどくタワーつくるから(どーん!)♬
♬おえかきするからみてて ちょっとまって!タカとワシってどうちがうの~?(おおきさ!))♬
歌いながら次々と遊びをめぐる、ワンカットのシーン。ここからおにいさんのパートで、合いの手も交代しています。
あづきおねえさんとかずむおにいさんも登場し、楽しそうにつみきをしていますね。
そして冒頭でまやおねえさんが描いていたタカとワシが登場!雑学も挟みつつ、遊び心満載の歌詞です。
子どもが突拍子もないことを言って本当にできると信じていたり、想像の世界を膨らませたりする姿を見るとほほえましくなりますよね。
まだこの時は「ほほえましい」レベルなんですが、
次のフレーズからぐっと引き込まれます。
Bメロ
♬あさからずっと むねのワクワクが♬
少し寂し気な曲調とともに、
子どもが心の内をぽつりとつぶやくような、ワンフレーズ。
子どもの内心に迫りながら、明るく少し切なく歌い上げるまやおねえさん。
そして映像では、たくさんの子どもたちが、集まってきます。
輪の中に入り遅れた子を見つけてすかさず「おいで~」と手招きするあづきおねえさんすごい!
みんなとハイタッチしようと手を伸ばすおにいさんおねえさんたちを見て、また感動!
♬あっちにこっちにキョロキョロして とまらなくなくなくなくない?(どっち?)♬
朝からずっとワクワクして、止まらないんですよね。子どもの好奇心って。
「なんで?なんで?」「みてて!みてて!」
興味を持ったことに関して、大人と対話し、共感してもらうことが、子どもにとってはすごく嬉しい。
すべての原動力になる。
日々の業務に忙殺されて、つい空返事してしまう大人に、それを思い出させてくれるんですよ。
この歌詞から子供たちの工作が始まります。
ファンアートを描きながら気が付きましたが、衣装が子どもも大人もオーバーオールやサロペットで、全員が違うデザインのものを着ています。
描き分けがとても楽しかったです!衣装さんナイスです‼
筆を手にしてキョロキョロと周りの子の様子をうかがう姿、恐る恐る筆を走らせる姿が、ラストの「できた!やりきった!」と喜びを爆発させるシーンと対比されて、とても印象深いです。
サビ1
♬みてて!まぁみててよ♬
「まぁみててよ」に心臓を掴まれました。
「自分で鍵を開けたい!」「牛乳をコップに入れたい!」
最後まで見届けるのすごく忍耐力が要ります…。
大人がやればすぐに解決することです。子どもに任せると、待つ時間が長くなったり、後始末の方が大変だったりします。
でも、子どもの成長の種はそこに隠れているんですよね。
自分でやったらうまくいった!嬉しい!褒められた!次もやりたい!
うまくいかなくても、叱るのではなく「どうやったらうまくいくかな?」一緒に考えて「次はきっとできるよ!」と励ます。
自分の中で目指している子育て観が、この一言に凝縮されていました。
まぁ、さいごまでみててよ!子どもに諭されているような気持になります。
工作をする子どもたちの表情はどんどん輝きだし、筆運びも軽やかです。
曲が進むにつれて、描き表したい気持ちが膨らんで、自分らしく表現していく子どもたち。
この辺りから涙腺が緩んできます。
♬やってみたいの うちわでそらをあおいで♬
手に絵の具がついてもニコニコ見せてくれる子
画用紙を笑顔でびりびり破る子(たぶん、このオレンジの紙が後のにんじんになるのかな?)
作りながら、やってみたいことが次々と湧いてきて、汚れるのも気にせず自由に表しています。
子ども達と活動をするときに、短時間の収録でここまでの笑顔、のびのびした行動を引き出すのに、どんな段階を踏んで、どんな声掛けをしたんだろう?
気になります!工作監修のてんてんとさん‼
♬くもをうごかせたら おにわのナスもあまくなる(なせばナスー?!)♬
パッカーン!と紙を割いて満面の笑顔の子…また涙腺が緩みます。
そして大きな顔が描かれた紙を、大人と子どもで協力して壁に貼っていきます。
だいすけおにいさんとあつこおねえさんの時の「やくそくハーイ!」(これも大好きです!)と似たシチュエーションですね。
子ども達がよごれを気にせず全身を使ってみんなで創作、人生で一度は体験してみたいです…
歌詞はダジャレや言葉遊びがたくさん隠れていて「あげあげドーナツ」のような楽しさがありますね。
♬みてて!て・・・ててて うまくいかないときでもへっちゃら♬
壁に次々と貼られていく、子どもたちが描いた顔。
高いところはかずむおにいさんがジャンプ!「わ~すごい!」と子どもたちの声が聞こえてきそうです。
すっかり表情も和らいで、カメラに向かってピース☆
♬けんだましてたら たまたま げつめんちゃくりくせいこう(みてたー?)♬
おにいさんおねえさんたちがけん玉に挑戦!なかなか難しく、うまくいかない…ここでけん玉のおにいさんが登場!レベルの高い技を繰り広げます。
映像から考えると、この部分の歌詞だけは大人視点なのかな?と思います。
大人でも上手くいかないことってたくさんあって、何度も失敗しながら成長します。
そしてたまたま(努力が実って)月面着陸成功したら、もう飛び上がるくらい嬉しいです。
「みてたー?」と周りの人に認められたいと思うのは、人間の本質じゃないかと思います。
マズローの欲求5段階の中の4段目「承認欲求」にあるように、周りの人から認められ、自信をつけて次の挑戦に向けて行動する…すべての原動力が「みてたー?」に込められていると感じました。
このシーンで「ほら、大人のあなたも、見てもらえたら嬉しいよね!子どもも一緒だよ」と言われたような気がします。
サビ2
♬みててもらえたら ムクムクとあふれてくる ゆうきとパワー♬
まやおねえさんの横で壁にハートを貼る子
にんじんのような作品を指さして、嬉しそうに話している子
大人からすると何でもないようなことでも、見てもらえた子どもはムクムクと勇気とパワーがあふれてくるんですね。
冒頭の「みてて」よりも熱い視線で見てしまう自分に気が付きます。
「うん!ちゃんと見てるね!」
♬ドキドキたまごをわったら なんと!おおあたりのみつご(コケコッコー)♬
おにいさんおねえさんたちと一緒に、楽しそうに作品を貼っていく子どもたち。
たまご割りは「やってみたい!」の象徴のようなものですね。
子どもも大人もドキドキしながらやってみたら(大人は我慢して最後まで手伝わず見守っていたら)
なんと大人もびっくりするような結果が待っていた!
という月面着陸成功のような位置づけの歌詞だと思われます。
どんなことにも子どもと一緒に心から喜ぶことのできる、そんな関わり方を心掛けたいなと感じさせられました。
♬みてて!「いいね!みてるよー!」♬
カラフルに彩られたスタジオ。床一面に散らばる画用紙。ぴょんぴょんと飛び跳ねて笑顔で手を振る子どもたち。
この歌詞で初めて、大人からの返事が返ってきます。
子どもとおにいさんおねえさんたちの力で、こんなにすごいことをやってのけたんだね!
すごいね!見てるよ!
この子たちの親になったような気持ちで、涙腺が崩壊です。この文を打っている今も泣いています。
子どもが秘めたパワーを具現化したような映像、歌詞、曲に、圧倒されます。
♬おはなもうみもふじさんもみてて みんなではくしゅしあおうよ きみのめでみてかがやかそう♬
ふじさんも、で色紙を空に投げる子どもたち。ここでまた泣けます!
散らかしてもいいよごしてもいい空間で、こんなにのびのびと自分をさらけ出して表現する子たち。
自分は親として「散らかさないようにね」「よごさないようにね」と言う割に、
散らかしてもいい、よごしてもいい時間と場所を提供をできていたのかな…と反省しました。
もちろんルールの中で学べることもたくさんありますが、やりたいこと、楽しいことを叶えてあげる努力もしようと強く思いました。
♬せかいはみててカーニバル みてて!♬
前奏で踊っていた振付でもう一度踊ります。しかし状況が冒頭とラストでは、意味合いが全く違います。
初めはおにいさんとおねえさんだけが、真っ白なセットで踊っていましたが、ラストは子どもたちと一緒に彩られたステージで踊っています。
曲を追う中で「みてて」がどれほど希望と可能性にあふれた言葉か、思い知らされました。その上で最後に語り掛けられる「みてて!」のかけがえのなさ。
おわりに
おかあさんといっしょの歌はどれもいい歌で、感動することもたびたびあります。しかし
ここまで心動かされ、子育て観を揺るがされ、子どもとの時間を大切にしたいと思えることが衝撃でした。
私の場合は、イラストでこの曲のすごさを表現したい!と突き動かされましたが、
人の心を動かすためには作り手の表現力が必要です。
作詞、作曲、演者、演技指導、歌唱指導、工作監修、装飾…
さまざまな作り手たちが日々の研鑽の成果を結集させた
すばらしい作品でした。
人の心を動かすために、どのような創意工夫がなされているのか、をじっくり考えることができたのはとても貴重な経験でした。これからも良い作品に触れて、感動し、分析し、さらに技術を磨いていきたいです。